13年後のメンテナンス

少し前の話になりますが、チェアのメンテナンスのご依頼をいただきました。

2本のうち1本は、チェアの後脚から背板が完全に外れてしまった状態とのことで、修理可能か事前にお電話にてご相談をいただいていました。

なかなか電話では状態を把握することは難しいため、お写真も送っていただき、おそらく修理可能ですとお伝えして、ご依頼いただいたという経緯です。

メンテナンスを完了した写真がこちらです。



お客さまが撮影されたお写真ですが、新品のようにキレイになったととても喜んでいただけました。

そして、修理する前のチェアがこちら。



「なかなか手ごわいな…」正直な僕の第一印象です。

しかし、修理・メンテナンスを担当した職人の地道な丁寧な仕事により、座面も木部も明るくなったチェアのように、お客さまの表情も明るくできたのであれば、これほどうれしいことはありません。家具職人冥利に尽きます。



そして、これらのきれいなお写真と、メンテナンスにまつわるお話は、お客さまがブログでご紹介されたものです。

その記事はこちらです。

「13年使ったイスが、新品のようにキレイになって戻ってきました。13年前、2007年。」


これを偶然に見つけて読んだ僕は、ほんとうにうれしい気持ちになり、この仕事を続けてきて心からよかったと思いました。

13年前にダイニングセットご購入いただいた話から、使ってきたチェアが捨てられる寸前で踏みとどまった話など、お客さまひとりひとりにストーリーがあって選んでいただいているということを実感しました。

僕たちがつくるテーブルやチェアは「モノ」ですが、お客さまに選ばれて使われていくうちに、想いや思い出が刷り込まれて、体験や歴史などの「コト」のような存在になっていくんですよね。だからこそ愛着がわくし、大事に使おうと思ってもらえるということです。

僕たちの仕事は、そういう存在にしてもらうための最低限のお手伝いなのかもしれません。長く使えるだけのデザインと強度。直して使ってもらうための関係を築くこと。これからもそう思ってもらえるものづくりと、サポートに励んでいきたいものです。

 

ぜひ、多くの方に読んでいただければと思います。

そして、こちらのブログを書かれているお客さま、シンガーソングライターとして活動されているきたはらいくさんという方です。

オフィシャルサイトはこちらです。

「きたはらいく Official Web Site」

CDも聞いてみよう!と思った方、僕も同じです。みんなで聞いてみましょう!

 

今回のように、メンテナンスのご依頼というのは、お客さまの気持ちだったり、歴史だったりを肌で感じることができるとてもやりがいのある仕事です。

これまで30年近く続けてきたikususuは、「これからも使い続けたい」と思っていただいているお客さまを全力でサポートします。

廃番になってしまった製品でも、直るかどうかわからないものでも、お気軽にご相談ください。

 

2020.12